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神戸地方裁判所 昭和51年(行ウ)25号 判決 1978年5月10日

原告 有限会社 扇港不動産

右代表者代表取締役 郷司辰男

原告 郷司辰男

被告 芦屋市固定資産評価審査委員会

右代表者委員長 村上喜夫

右指定代理人 大橋靖和

同 阪本繁樹

主文

原告らの請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告有限会社扇港不動産に対し、別紙物件目録(一)の土地(以下「本件(一)の土地」という。)について、昭和五一年六月一六日付固定資産評価決定額(以下「評価格」という。)五七三万五、〇〇〇円を取消し、申出価額一〇一万四、四七五円に訂正する。

2  (主位的請求)

被告は、原告郷司に対し、別紙物件目録(二)の土地(以下「本件(二)の土地」という。)について、昭和五一年六月一六日付評価格七一八万一、六〇〇円を取消し、申出価額一二五万六、七八〇円に訂正する。

(予備的請求)

被告は、原告郷司に対し、本件第二の土地について、昭和五一年六月一六日付評価格七一八万一、六〇〇円を取消し、三五九万〇、八〇〇円に訂正する。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告会社は本件(一)の土地を所有し、原告郷司は本件(二)の土地を所有し、それぞれ、本件各土地の固定資産税の納税義務者である。

2  原告らは、昭和五一年四月二二日、被告に対し、それぞれ本件各土地につき、昭和五一年度分の固定資産評価格の審査申出を行なった。しかして、被告は、同年六月一六日、本件(一)の土地については評価格の変更決定を、本件(二)の土地については審査申出を棄却する旨の決定をそれぞれ行なった(以下「本件各審査決定」という。)。

3  本件各審査決定は、次の事由により違法である。

(一) 本件(一)及び(二)の土地には、その隣接した芦屋市東山町二一番の三、同番の四、同番の七及び同番の一七の土地上に訴外株式会社アーバン御郷が建築した共同住宅(以下「本件共同住宅」という。)に付帯した排水溝(建築物本体〇・〇三メートル、樋二〇・三センチメートル、溝四三センチメートル)が越境している。右排水溝は、建築基準法の要請に基づくものであり、本件共同住宅に附帯した不可欠のものである。従って、その設置場所たる本件各土地は住宅用地というべきであり、地方税法第三四九条の三の二第二項の「小規模住宅用地」に該当する。然るに、被告は、本件(一)の土地については本件共同住宅が越境している事実を認めながら、また、本件(二)の土地については右越境を認めず、本件各土地につき右地方税法の特例を適用しなかったのは違法である。

(二) 本件(一)及び(二)の土地は、いずれも隣接の公道が一〇度以上傾斜して高くなっているため、雨天時には、通常の雨量でも公道の雨水が滝のごとく流れ込み、また地下水となって本件(一)の土地及びその下段の本件(二)の土地に流れ込み、これがために土砂が流出し、宅地の機能を麻痺させるのである。原告らは、雨の都度自費で北側公道上に流失した土砂及び溝の掃除をしている現状であるのに、被告は右の現状把握を適正に行なっていない。

(三) 以上の事由により、本件(一)及び(二)の土地の各評価格は、それぞれ、審査申出の額である一〇一万四、四七五円及び一二五万六、七八〇円が相当である。

(四) 仮に、右主張が理由がないとしても、本件各審査決定は次の事由により違法である。

すなわち、本件各土地は、いずれも崖地であって通常の用途に供することができない土地であるから、被告は、地方税法第三八八条所定の固定資産評価基準の崖地等補正を適用して相応の減価をすべきものである。

本件(一)の土地については、本件審査決定による変更後の評価格五七三万五、〇〇〇円より、平地にして通常の宅地の用に供されるのに必要な造成費四一〇万円、同じく設計料及び諸経費六二万〇、五二五円を控除した金一〇一万四、四七五円に訂正すべきである。

また、本件(二)の土地については、土砂の堆積で本件(一)の土地との境界では約一メートル以上の土砂が斜面を作って平地の宅地とのゆるやかな差があり、崖地等補正率五〇%を適用して、評価格を半分の三五九万〇、八〇〇円に訂正すべきである。

4  よって、原告らは被告に対し、それぞれ、請求の趣旨記載のとおり、本件審査決定の評価格を訂正することを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因第1、2項の事実は認める。

2  同第3項の事実中、(一)記載の被告が本件審査決定において、本件共同住宅が本件(一)の土地に若干侵入して建築されていることを認めながら、また、本件(二)の土地については右侵入を認めず、いずれも、小規模住宅用地に対する特例措置を適用しなかったことは認め、その余の事実は争う。

三  被告の主張

1  訴外芦屋市長は、本件(一)及び(二)の土地の昭和五一年度の評価格を、本件(一)の土地については五七九万七、〇〇〇円、本件(二)の土地については七一八万一、六〇〇円と、それぞれ、決定したところ、原告らはこれを不服として本件審査の申出をした。そこで、被告は、口頭審理と実地調査を行ない、同年六月一六日、本件(一)の土地については評価格を五七九万七、〇〇〇円から五七三万五、〇〇〇円に変更する旨、また本件(二)の土地については審査申出を棄却する旨の決定をした。

2  原告らの被告に対する右各審査申出の理由は、

(1) 本件共同住宅は建築確認書記載の位置より移動して本件各土地に侵入して建築されているから、本件各土地の評価格の決定には小規模住宅用地に対する特例を適用すべきである。

(2) 本件各土地は、立地条件的に一メートル以上高い南側公道の水が侵入し、多大の被害を受ける。

というのであり、右理由により、本件(一)の土地の評価格は一〇一万四、四七五円に、本件(二)の土地の評価格は一二五万六、七八〇円に、それぞれ、修正すべきであるというにある。

被告は、右審査申出に対し、右理由(1)については、本件各土地の境界線及び本件共同住宅の位置を、一応、原告らの各審査申出書添付の測量図のとおりであると認めたうえ、本件(一)の土地については右共同住宅が〇・〇三五平方メートルの範囲で侵入していることは認めたが、本件(一)の土地を右共同住宅の敷地と同一画地とは認め難いと判断し、本件(二)の土地については右共同住宅の侵入は認められないと判断した。また、理由(2)については、本件(一)の土地と南側公道との間には高低差は認められないが、公道の雨水の侵入の影響が隣接土地と比較し若干大きいと認め、これを考慮して前記のとおり評価格を変更した。一方、本件(二)の土地は、北側公道に沿接してその道路との間に高低差はなく、また南側公道の雨水の侵入の影響のあることは認められるが、土地の価格を評価するうえにおいて特に考慮を必要とするに至らないものであると判断し、本件審査申出を棄却した。

3  およそ市町村長が固定資産の価格を決定するには、評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続につき、地方税法第三八八条により定められた固定資産評価基準(昭和五〇年一二月二二日自治省告示第二五二号により改正のもの)に従わなければならないところ、同基準によると、宅地の評価は、各筆の宅地について評点数を付設し、その評点数を評点一点当りの価額に乗じて各筆の宅地の価額を求める方法によること、そして市街地宅地評価法においては各筆の宅地の評点数は一画地ごとに路線価を基準として画地計算法を適用して求めること、一画地は原則として土地課税台帳または土地補充課税台帳に登録された一筆の宅地によるものとすること、但し、一筆の宅地または隣接する二筆以上の宅地について、その形状・利用状況等からみて、これを一体をなしていると認められる部分の宅地ごとに一画地とする旨定められている。また、地方税法第三四九条の三の二に規定する住宅用地を認定する場合における敷地についても同様の画地の認定を行なうものである。

ところで、本件(二)の土地については、前記のとおり本件共同住宅が侵入して建築されているとは認められないし、本件(一)の土地については、前記のとおり本件共同住宅が侵入して建築されているけれども、その侵入の範囲はわずか〇・〇三五平方メートルで全体からみるとあまりにも僅少であり、これを特に区分しなければ各筆ごとの評価の均衡及び課税の公平を著しく失することになるものとは認められないので、右一筆を一画地とする原則に基づき画地認定をしたものであり、わずか〇・〇三五平方メートルを殊更区分するのは社会通念上も相当でない。また、本件各土地は、その余の部分の形状利用状況からみて同所二一番の三、同番の四、同番の七、同番の一七のごとく住宅を維持しまたはその効用を果すために使用されている状態にあるとは考えられず、住宅用地とは認めがたい。ちなみに本件各土地は、本件固定資産税の賦課期日である昭和五一年一月一日当時、有料駐車場として使用されていたものである。従って、本件各土地に対する固定資産税の課税標準について、地方税法第三四九条の三の二第二項所定の小規模住宅用地に関する特例を適用する余地はない。

4  原告らは、本件共同住宅に附帯した排水溝が本件各土地内に設けられているから本件各土地は住宅用地であると主張する。右排水溝に関しては、原告らは被告の本件審査においてもなんら主張しなかったものであるが、右主張も理由がない。すなわち、

(1) 右排水溝は約二三メートルであり、本件各土地内に、東側共同住宅の敷地との境界線付近に沿い、南端は本件(一)の土地の東南部において南側公道に接し、北端は本件(二)の土地の北側公道上の排水溝に通じている。その間北方へ七・〇メートルの地点から北端に至るまで右共同住宅の西側に接している。

(2) 右排水溝の南端から北方八・四九メートルの地点において、初めて右共同住宅(五階建)の陸屋根のうち一段低い西南隅の二階建部分の陸屋根の雨水を排水するため樋を設けて右排水溝を利用している。

以上の排水溝の設置状況及び利用状況に共同住宅の建築位置との関係等を併せ考えると、右排水溝についても、本件各土地内に排水溝があるからといって殊更一筆を一画地とする宅地評価上の原則から離れ、本件各土地を右共同住宅用地とし、或いはまた、排水溝の部分を本件各土地と区分して右共同住宅用地としなければ各筆ごとの評価の均衡が著しく損われ、かつ課税の公平の原則に著しく悖ることになるとする程の理由は認められない。

何故なら、右排水溝は、共同住宅の建物及び敷地からの雨水や汚水の排出のためには普段は全く利用されておらず、ただ降雨時にのみ共同住宅の陸屋根の極く一部分の雨水の排出のために、しかも右排水溝の一部のみが利用されているにすぎず、むしろ右排水溝は、共同住宅の陸屋根の極く一部分の雨水の排出と併せて本件各土地の排水にも利用すべく設置されたものとみることができる。また溝は、通常土地を区分する目的を以てその境界に沿い設置されるものであるから、右排水溝は、本件各土地を共同住宅の敷地と確然と区分するためにも設置されたものとみることができるので、右排水溝全部を共同住宅に附帯しているものということはできないし、かつ排水溝の部分は本件各土地全体からみてもわずかであるからである。

5  本件各土地に対する雨水の影響についての原告らの主張は争う。

土地の評価に関し、雨水の影響については固定資産評価基準及び芦屋市固定資産(土地)評価事務取扱要領には特に規定されていない。けだし、本件各土地の存在する芦屋市内の山手地区においては傾斜地が多く、高地から低地に雨水が流入することは免れ得ないのであって、宅地評価の基礎である路線価の決定には既に右事情も参酌されているものである。そして、芦屋市内における固定資産の価格等の適正と公平を期することを使命とする被告としては、固定資産評価審査申出書の審査にあたり、特別の事情がない限り定められた基準に従って判断すべきは当然である。ところで、本件各土地について、被告は、実地調査の結果に基づき、本件(一)の土地についてその地勢や道路との関係により、南接の道路からの雨水の侵入の影響を特別に考慮すべきものと認め、単位当り評点数に、一パーセント減ずるを相当とし、〇・九九を乗じたものを以て本件(一)の土地の単位当り評点数を認定したのである。

以上の次第で、被告が、本件各土地の評価に関し、雨水の侵入による影響について、本件(二)の土地については考慮せず、本件(一)の土地についてのみ前記の程度に考慮して判断したことは正当である。

6  傾斜地(崖地)の評価について。固定資産税に係る宅地の評価について自治大臣が定める固定資産評価基準中、画地計算法においては、崖地等で通常の用途に供することができないものと認定される部分を有する画地については、崖地補正率表を適用して求めた補正率によって、その評点数を補正するものとされている。この場合において、崖地(傾斜地)で通常の用途に供することができないものと認定される部分を有する画地とは、ある一つの街路に沿接する画地のうち、その一部または全部について、宅地として使用することができない程の傾斜を有し、他の画地とその状況が異なり補正をしなければ評価の均衡及び課税の公平を著しく失することとなると認められる場合の画地をいうのである。

そこで、本件各土地が、右にいう通常の用途に供することができない部分を有するものとしての「崖地(傾斜地)」に該当するものであるか否かであるが、本件各土地のそれぞれの一部において傾斜部分のあることは認められるものの、本件各土地の存在する芦屋市内の山手地区においては本件各土地と同様の傾斜地は多く、特に本件各土地と同様の地形であり、本件各土地に隣接する同所二一番の三、同番の四、同番の七、同番の一七の各宅地上には共同住宅が建築されており、宅地としての通常の用途に供されていることからみても、本件各土地は、いずれも、特に宅地として通常の用途に供することができない程の傾斜がある崖地とは認められない。従って、崖地補正率を適用してその評点数を補正する必要は認められないのである。

7  本件各土地の評価は市街地宅地評価法によって行なわれた。

すなわち、本件(一)の土地については、その沿接する道路(路線番号二三―二二―五)の路線価三万九、八〇〇点(一平方メートル当り評点数)に、高層建物の影響を考慮して、芦屋市固定資産(土地)評価事務取扱要領により補正率〇・九四を乗じて単位地積当り評点数(一〇〇点未満切捨て)を求め、これに地積一五五平方メートルを乗じてその評点数五七九万七、〇〇〇点を求めた。この評点数を前記固定資産評価基準に基づき、芦屋市長は評点一点当りの価額一円に乗じて本件(一)の土地の価格を五七九万七、〇〇〇円と決定したものである。そして、被告は、前記のとおり沿接する道路の雨水の侵入を考慮し、芦屋市長の決定額の算出基礎である単位地積当り評点数に〇・九九を乗じ単位地積当り評点数(一〇〇点未満切捨て)とし、これに地積を乗じて五七三万五、〇〇〇点とし、前記のとおり一点当り価額一円に右評点数を乗じて本件(一)の士地の固定資産の価格を五七三万五、〇〇〇円と決定した。

また、本件(二)の土地については、その沿接する道路(路線番号一三―一九―〇七)の路線価四万五、〇〇〇円(一平方メートル当り評点数)に、高層建物の影響を考慮して、芦屋市固定資産(土地)評価事務取扱要領による高層建物影響補正率〇・八五を乗じて単位地積当り評点数(一〇〇点未満切捨て)を求め、これに地積一八八平方メートルを乗じて求めたその評点数を前記のとおり一点当りの価額一円に乗じた価額七一八万一、六〇〇円をもって芦屋市長は本件(二)の土地の価格と決定したものである。そして、被告は、前記のとおり、本件共同住宅の侵入の右無及びその形状、利用状況を考慮し、また公道の雨水の侵入についても影響のあることは認められるものの、評価をするうえにおいて特に減額を考慮する必要はない程度の状況にあるものと考え、その結果、芦屋市長が決定した前記価格は適正であると認め、原告の審査申出を棄却する決定をした。

8  以上の次第で、被告のなした本件審査決定は適正であるから、これを不当としてその一部の取消を求める原告らの本訴請求は失当である。

四  原告らの反論

1  本件各土地を有料駐車場として使用したことはない。

2  雨水の影響について、被告は、単位当りの評点数から一パーセントを減ずるのを相当とし、〇・九九を乗じたものをもって本件(一)の土地の単位当り評点数を認定したものであると主張するが、根拠がなくて実状に合わないものである。本件(二)の土地についても、当然地形上配慮があって然るべきものである。

第三証拠《省略》

理由

一  原告らは、被告を相手として、主位的及び予備的請求として、本件各土地の固定資産税の評価格の訂正を求めるものであるが、当事者双方の主張に鑑みると、原告らは、訴外芦屋市長の決定した本件各土地の評価格に不服があったので被告に対して、それぞれ審査の申出を行なったところ、被告より本件名審査決定があり、それに不服のためさらに本件訴訟の提起に及んだものであることが明らかである。そして、このような場合には、固定資産評価審査委員会の決定の取消の訴えによるほかない(地方税法第四三四条)のであるから、原告らの本訴請求も、その趣旨は、要するに、本件各審査決定(本件(一)の土地については、右審査決定により、市長の決定した評価格が変更されているけれどもなお、その変更額が不服であるとして)の取消を求めていると解するほかない。

二  請求原因第1、第2項は当事者間に争いがない。また、《証拠省略》によれば、被告の主張第1、2項記載のとおりの経緯及び理由により被告の本件各審査決定のなされた事実を認めることができる。

そこで、本件各審査決定につき、原告主張のような違法が存するかどうか、以下順次検討する。

三  まず、原告らは、本件各土地がいずれも、地方税法第三四九条の三の二第二項の「小規模住宅用地」に該当すると主張するので判断する。

本件各土地に隣接した芦屋市東山町二一番の三、同番の四、同番の七、同番の一七の土地上に本件共同住宅が建築されていることは、当事者間に争いがない。そして、《証拠省略》によれば、本件共同住宅は、右四筆の土地の西側境界線(本件(一)及び(二)の土地との境界線)ぎりぎり一杯に建てられており、その西南端部分において三センチメートル、面積にして〇・〇三五平方メートル程本件(一)の土地に越境していること(本件(二)の土地への越境は認められない)、右住宅の西壁に接し、本件各土地にわたって長さ約二一・六五五メートル、幅三〇センチメートル弱で、その両側に厚さ各五センチメートルないし九・五センチメートル位の縁取のある排水溝があって、その南端は本件(一)の土地の東南部において南側公道に接し、北端は本件(二)の土地の東北部において北側公道上の排水溝に通じていること、右住宅の西壁の南端から北へ一・四二メートルの箇所に共同住宅の陸屋根のうち一段低い西南隅の部分の雨水を排出するために、右壁面から約一三・五センチメートル本件(一)の土地に突出した形で樋が一本、上下に通って右排水溝に向っていること、本件各土地上にはその他の建築物はなく一帯に砂地で、所々、雑草が生えて、本件(一)の土地と本件(二)の土地の境界付近の急斜面を除いて、他は駐車場としても利用し得る状況にあることが認められる。右認定に反する証拠はない。

ところで地方税法第三八八条第一項によれば固定資産の評価および価格の決定については自治大臣により右評価の基準ならびに評価の実施の方法および手続が定められることゝなっており、右により定められた固定資産評価基準(昭和五〇年一二月二二日自治省告示第二五二号により改正されたもの、以下「評価基準」という)によれば宅地の評価方法には市街地的形態を形成している地域内にある宅地について適用される「市街地宅地評価法」と他の地域内にある宅地について適用される「その他宅地評価法」とがあるが、いずれも各筆の宅地について評点数を付設し、当該評点数一点当りの価格に乗じて各筆の宅地の価格を求める方法によるものであること、右「市街地宅地評価法」による評点数の付設の方法としては、まず、宅地を住宅地区、その他の用途地区に区分して各地区について主要街路に沿接する標準宅地を選定し、右標準宅地の適正時価を評定して右主要街路について路線価を付設し(右路線価に比準してその他の街路についても路線価を付設し)、右路線価を基礎として別に定める「画地計算法」を一画地の宅地ごとに適用して各筆の宅地の評点数を付設するが、右の一画地は原則として土地課税台帳または土地補充課税台帳に登録された一筆の宅地によるものとし、ただ、一筆の宅地または隣接する二筆以上の宅地についてその形状、利用状況等からみてこれを一体をなしていると認められる部分に区分し、またはこれらを合せる必要がある場合においてはその一体をなしている部分の宅地ごとに一画地とするよう定められている(評価基準第一章土地、第三節宅地、一、宅地の評価、二、評点数の付設、(一)「市街地宅地評価法」による宅地の評点数の付設、1付設の順序、別表第3画地計算法、2画地の認定)。そうして地方税法第三四九条の三の二において住宅用地に対する固定資産税の課税標準については住宅政策上の見地からその税負担の増加を緩和する趣旨にもとづいて土地の評価替に伴う固定資産税の課税の適正化措置の一環として特例が定められているが、右規定は人の居住の用に供する家屋の敷地の用に供されている土地についてとられる措置であって右住宅用地を認定する場合における敷地についても評価基準に定められたと同様の画地の認定がなされるものと解される。

そして、右の評価方法に則して本件共同住宅と本件各土地との関係についてみるに前記のとおり、本件共同住宅が本件(二)の土地に侵入するところはなく、また、本件(一)の土地に侵入しているとはいえ、その範囲は極めて僅少な部分に過ぎないことが明らかである。また、そのうち排水溝については、その設置場所から考えると、右住宅の敷地である四筆の土地と本件各土地とを画する境界となっており、右共同住宅のためには、僅かに、降雨時における、陸屋根の一部の雨水の排出する用をなしているが、その外は本件各土地の排水のために利用する目的を有しているものとみられる。

もっとも建築基準法第一九条第三項によれば建築物の敷地に雨水を排出するための施設をなすべきことを義務づけているけれども、地方税法第三四九条の三の二の規定の前記趣旨と右排水溝の位置、形状とその共同住宅に対する効用の程度とを考え併せるならば右排水溝があるからといって本件各土地をもって右共同住宅の敷地と同様の利用状況、形状にあるとして右規定を適用すべきものと解するは相当でない。

その他、本件各土地が特に右住宅敷地と同様の利用状況、形状にあるとは認め難い。以上の、本件各土地への本件共同住宅の侵入の程度、本件各土地の利用状況および地方税法第三四九条の三の二の趣旨を考慮すると、前記画地計算法の適用のうえで、ことさら原則を外して右侵入部分を独立の画地として扱い、或いは本件各土地を前記四筆の土地と一体の土地として共同住宅を維持しまたはその効用を果すために使用されている状態にあるものとして扱うことは、社会通念上相当でないというべきである。

そうすると、本件各土地の評価(課税標準)につき、地方税法第三四九条の三の二第二項の「小規模住宅用地」に関する特例を適用する余地はないから、原告らの主張は理由がない。

四  次に、原告らは、本件各土地に対する南側公道からの雨水の侵入の影響を被告が適正に考慮していないと主張する。

《証拠省略》によれば、本件各土地付近一帯は、おおむね、南側が、高く北側が低くなっており、本件各土地は南北に並んで位置しており、南側の本件(一)の土地はその南側において平坦であるが北側の本件(二)の土地との境界付近を中心として、北の方へ急傾斜して下降して本件(二)の土地に接し、本件(二)の土地は北の方へゆるやかに傾斜して下降していること、本件(一)の土地とその南側に東西に走る道路との間に高低差はないが、右道路から、本件(一)の土地の付近において南の方向へ急傾斜して上昇する別の道路のあることが認められる。右事実によれば、降雨時には、本件(一)の土地の南側の道路から本件(一)の土地へ、さらにその北下の本件(二)の土地へ雨水が侵入することは推認できるけれども、その影響の程度については必ずしも明らかではない。また、《証拠省略》によれば、本件各土地の評価格の決定は、評価基準及び芦屋市固定資産(土地)評価事務取扱要領に従い、被告の主張第7項記載のとおり、各沿接道路の路線価に基づき計算されたこと、右路線価は、街路に沿接する宅地のうちから選定された標準宅地の売買実例価額から評定する適正な時価に基づいて付設されるものであること、右評価基準等には、特に雨水の影響に関する規定はおかれていないことが認められ、他に右認定に反する証拠はない。

以上の事実を総合すると、本件各土地付近一帯の地勢に照らし一般に、高地から低地に雨水が流入することは免れ得ないところであって、本件各土地の基礎となった路線価の決定については右の事情も、当然参酌されているものと解されるところである。ただ、本件(一)の土地についてはその南側の東西に走る道路へ南から急傾斜して下降する道路からの雨水の影響が隣接土地に比較して若干大きいと認められるところから被告において芦屋市長の決定した評価額を一パーセント減じ、本件(二)の土地については土地の価格を評価するうえで特に考慮を必要としない程度であると認めた被告の判断は、これを不適正とする事情を見出し難いので、適正なものと認めることができる。

よって、原告の右主張は理由がない。

五  さらに、原告らは、本件各土地はいずれも崖地であるから、評価基準の崖地等補正を行なうべきであると主張する。

評価基準によれば、画地計算法の適用による各筆の土地の評点数の付設に際し、「崖地等で、通常の用途に供することができないものと認定される部分を有する画地については、当該画地の総地積に対する崖地部分等通常の用途に供することができない部分の割合によって、『崖地補正率表』(附表8)を適用して求めた補正率によって、その評点数を補正するものとする。」と規定されている(別表3、画地計算法8の(3)袋地等の評点算出法)。この場合において崖地(傾斜地)で通常の用途に供することができないものと認定される部分を有する画地とは、ある一つの街路に沿接する画地のうち、その一部または全部について、宅地として使用することができない程の傾斜を有し、他の画地とその状況が異なり、その路線価の決定に当っては考慮の外になっているため補正をしなければ同一路線価に従う他の宅地に比し、評価の均衡および課税の公平を著しく失することとなるようなものをいうと解される。

ところで、本件(一)及び(二)の土地の地形は、前記四認定のとおりであって、傾斜地であることは認められるけれども、《証拠省略》によれば、本件各土地の周辺も一般に傾斜地であるがマンション等の建並ぶ住宅地であること、ことに本件各土地に隣接して建築されている本件共同住宅の敷地は本件各土地と同程度の傾斜を有していることが認められる。右事実によれば、右傾斜地の点については前記のとおりその路線価の決定について既に参酌されているものと解され、本件各土地が同一路線価にある、他の宅地に比し「通常の用途に供することができない」ほどの「崖地」でないことが認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

そうすると、本件各土地の評価格の決定において、右崖地等の補正が行なわれなかったのは相当であるから、原告らの右主張は理由がない。

六  以上の事実によれば、被告のなした本件各審査決定は相当であって違法ということはできず原告らの主張はいずれも失当であり本訴請求は理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第八九条、第九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 中村捷三 裁判官 住田金夫 裁判官小松一雄は転勤につき書名押印できない。裁判長裁判官 中村捷三)

<以下省略>

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